日赤発祥の地・熊本 〜連載企画〜

連載44 「日赤発祥の地」宣言(Ⅰ)

2012年(平成24年)9月23日(日)、赤十字広報特使の藤原紀香さんをはじめ、本社からは大塚副社長、富田事業局長、長田広報企画室長が来訪し、「熊本赤十字病院 こども医療センター全面オープンイベント」が開催された。これに付随して前日の22日(土)は、「日赤発祥の地」訪問として、熊本洋学校教師館「ジェーンズ邸」(=日赤記念館)の訪問や、田原坂公園での「日赤発祥の地・赤十字広報特使来訪記念献花式」が計画された。

当日ジェーンズ邸では、博愛社の設立請願の直訴を行うために元老院議官佐野常民が訪れ、熾仁親王殿下の御英断により博愛社設立が許可されたシーンを再現し、本社広報用の撮影(ビデオ・カメラ)が行われた。次の、田原坂資料館の訪問では、青少年赤十字の加盟校である田原小学校の児童と一緒に、館内に展示してある西南戦争の史料、生徒が描いた絵、日赤の展示物等を視察し、児童たちとの交流が行われた。紀香さんは、「児童達の描いた明るい未来の絵にとても愛を感じ感動した」と感想を話した。そして、「日赤発祥の地・赤十字広報特使来訪記念献花式」では、西南役戦没者慰霊之碑の前で、黙祷と献花が行われ、来賓挨拶の後、田原小学校「郷土伝承クラブ」による剣舞が披露された。最後に、約250名の田原坂関係の参加者を前に、広報特使による「日赤発祥の地」の宣言が行われ、藤井植木町特例区長(西南の役田原坂顕彰会会長)に宣言文が手渡された。また、「輝く未来の担い手である子供たち」へのメッセージを田原小学校の児童代表に手渡された。

田原坂らしく、あいにくの雨であったが、無事に一連の行事が終了した。ご来賓の植木町、玉東町、植木町西南の役田原坂顕彰会、田原小学校、日本の赤十字活動発祥の地を顕彰する会の皆さまに感謝いたします。

余談であるが、今回は、ソルフェリーノの視察を終えたばかりの赤十字広報特使の藤原紀香さんであったが、田原坂訪問の締めくくりとして、最後に「越すに越されぬ田原坂~♪」の象徴である「三の坂」を視察してもらい、田原坂崇烈碑前の囲み取材で、「ソルフェリーノの訪問直後の田原坂訪問」という、貴重な体験と感想を披露していただく予定であった。子供たちもその後のお見送りを楽しみにしていた。前日から地元の植木町の皆さんが「三の坂」周囲の草刈りを行い、目印の旗を設置するなど、準備万端でその時をを楽しみにしていた。しかし実際には雨が激しくなり気温も下がり、それどころではなくなり、西南役戦没者慰霊之碑前の記念撮影後の囲み取材で終了となった。慰霊之碑前からわずか50メートルが行けなかったのである。非常に残念であったが、「雨は降る降る、陣羽(人馬)は濡れる、越すに越されぬ田原坂~♪」と、歌のとおりとなり、地元の人々は慣れたものであった。強い雨風で、鳥肌がたつほどの寒い中、最後まで笑顔の絶えなかった広報特使藤原紀香さんにも感謝である。

ここで、「日赤発祥の地・赤十字広報特使来訪記念献花式」でのご来賓挨拶を紹介し、貴重な記録として残しておく。

【ご挨拶 西南の役田原坂顕彰会会長 植木町合併特例区長 藤井修一 様】
博愛に捧ぐ

西南の役・田原坂顕彰会の会長を務めております、植木町合併特例区長の藤井修一でございます。一言ご挨拶を申し上げます。 本日は日本赤十字社より、広報特使・藤原紀香様、副社長・大塚義治(おおつか よしはる)様はじめ関係者の皆様に田原坂にお越しいただいて、「日赤発祥の地・広報特使来訪記念 献花式」が開催されますことに、地元といたしまして深く感謝申し上げます。 明治10年の西南戦争から数えて既に135年が過ぎました。西南戦争は、大政奉還により近代化に着手したわが国が、近代国家へ生まれ変わるための産みの苦しみでした。徳川幕府が解体した後、明治政府は中央集権体制を目指して廃藩置県や士族の解体などを進めました。急速な改革に伴う対立が引き金となって、日本近代史上最大の内戦、西南戦争が勃発し、官軍と薩軍の戦いは7ヶ月間に及び、全体で14,000名を超える尊い命が亡くなっています。

「雨は降る降るじんばは濡れる、越すに越されぬ田原坂」と民謡に謡われているように、西南戦争最大の激戦が田原坂の戦いであり、最多の犠牲者を出しました。明治10年3月、冷たい雨の中この小さな丘を巡って激しい戦いが17日間も続きました。官軍が一日に使用した小銃弾は32万発といわれ、死者は官軍だけで1日平均100名にも上っています。 官軍も薩軍も共にわが国の将来を思い、自ら信じるところに従って戦った正義の戦いでした。多くの犠牲者を出した悲惨な戦争でしたが、この戦いを経てわが国の近代化が図られました。私たちは改めて尊い犠牲の上に今日の繁栄が築かれていることを心に留め、戦いの意義を広く伝えていかなければなりません。

ところで、激しい戦いの中で、官薩両軍ともにおびただしい数の負傷者が出ました。医師、医薬品、食糧は全く不足し、充分な治療を受けることができずに命を落とす兵士が続出しました。その惨状を嘆いた、元老院議官・佐野常民や大給恒(おぎゅう ゆずる)は、敵味方の区別なく負傷者を救護する「博愛社」の設立を訴えました。戦場の惨状を見ていた征討軍総督・有栖川宮熾仁(ありすがわのみやたるひと)親王は即座に設立を許されました。また、その数ヶ月前には、江戸時代以来の名医として名高い鳩野宗巴が人道主義にもとづき「敵味方の区別なく」治療を始めています。

熊本で誕生した博愛社は官軍薩軍の区別なく、多くの負傷者の治療を続けました。そして10年後に、博愛社は日本赤十字社と改称されています。西南戦争という悲惨な戦いの中で、敵味方の区別なく治療に当たるという人道的な救護活動、すなわち赤十字運動が開始され、今日の日本赤十字社に脈々と受け継がれていることの意義と重要性を改めて深く認識するものです。

本日このようにして、赤十字広報特使・藤原紀香様はじめ赤十字社の皆様にご来場いただいて献花式が挙行され、西南戦争を赤十字運動発祥の視点から再認識する機会に恵まれたことに感謝申し上げます。そして、この献花式が本日参列しました田原小学校の児童の皆さんの心にいつまでも残り、自分たちの故郷を「日赤」発祥の地として、尚一層誇りに思ってくれることを期待しています。 終わりに、西南戦争で亡くなられた御霊の安らかなることをお祈り申し上げますとともに、本日ご列席の皆様方のご健勝を祈念申し上げまして、ご挨拶といたします。

平成24年9月22日

 

【ご挨拶 玉東町教育長  坂田 傑 様】

本来ならば前田移津行町長がご挨拶を申し上げるところですが、公務が重なり出席できませんので、代わりまして、一言ご挨拶申し上げます。 本日は、西南戦争田原坂の激戦で戦没されました尊い方々の御霊をお祀りしてありますここ慰霊塔の御前において、日赤発祥の地・広報特使来訪記念献花式がこのように盛大に挙行されますことは真に意義深いものであり、お招きいただきましたことに心より感謝を申し上げる次第でございます。

西南戦争における戦死者は、慰霊碑にもありますように1万4千余名といわれています。また、その倍以上の人々が傷つき倒れたということもお聞きしております。当時は、当玉東町には政府軍の本営が置かれ、多くの負傷者の救護に当たるための病院が設置されました。そこでは地元の医師らによって日々懸命に救護活動が行われておりました。日本赤十字社の前身、博愛社が置かれたといわれる正念寺や徳成寺もその時の救護所の一つであり、今尚、往時の姿を伝えてくれております。また、地域住民の中には、賊軍として扱われた薩摩の負傷兵士を匿い、亡くなった兵士を丁重に葬り、今に至るまで祀られている方もおられると伺っております。日本赤十字社のスローガンに「人間を救うのは、人間だ」とありますが、135年前に、正にこの地で実践されていたということに、先人に対し深い敬意の念を抱くところであります。

今年は、明治十年の西南戦争勃発後、135年の年にあたります。戦争の経験者は今はなく、人々の記憶は風化するばかりですが、現在、熊本市北区植木町と当玉東町にまたがる西南戦争遺跡を国指定の史跡にする取り組みを行っており、発掘調査等の成果を踏まえた西南戦争遺跡の周知活用を図っているところです。これによって、西南戦争という歴史的事象だけでなく、その中で起こった赤十字精神の芽生えについて啓発し、後世に伝えて行きたいと思っております。

最後になりましたが、御霊に慶弔の誠を捧げますとともに、日本赤十字社の益々のご発展と、赤十字広報特使・藤原紀香様ならびに来賓・ご参列の皆様方のご健勝を祈念申し上げましてご挨拶とさせていただきます。

平成24年9月22日

(支部 梶山哲男)

 

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