日赤発祥の地・熊本 〜連載企画〜

連載40 「日本赤十字社ゆかりの地」

肥後藩の第12代最後の藩主であり、現在の日本赤十字社の近衞忠煇社長(=国際赤十字・赤新月社連盟会長)の曾祖父である細川護久侯は、博愛社設立の趣旨とその活動に深い感銘を受け、自らも協力するため3名の救護員を私費で博愛社に派遣した。また、明治9年11月から明治24年4月まで熊本県知事であった冨岡敬明権令は、博愛社が創設されると同時に、積極的に協力するとともに、西南戦争の終盤には博愛社支局長としても自ら博愛社の業務に関わっている。西南戦争が終わり、博愛社熊本支局は閉鎖されたが、東京に本部を置いた博愛社は、初代総長に小松宮彰仁親王殿下を推載し、救護活動のための事業を継続した。

博愛社設立当時から活動をともにしていた冨岡知事は、日本赤十字社の発祥の地であることを誇りに思い、赤十字事業の発展のため全国に習い、1889年(明治22年)5月30日、日本赤十字社熊本県委員部を設置した。当初は県庁内の警備課に事務所が置かれていた。初代委員長には冨岡知事、副長には県の山下秀実書記官が嘱託され、世界赤十字の一員として、ここ熊本においても赤十字運動が展開されるようになった。日赤熊本県支部の歴史を振り返ってみると、明治、大正、昭和、平成と激動の時代から成長、安定の時代へと移り変わり、素晴らしい業績を残す事ができた。これは、赤十字の人道博愛の精神と、先人たちから受け継がれた日本赤十字社発祥の地としての誇りと情熱が脈々と生き続けているからだ。また、赤十字の活動を支えていただいている国民の皆様をはじめ、奉仕団や赤十字関係者の心温まるご理解とご協力の賜物であることも言うまでもない。そして、赤十字の使命として、被害者の人道的利益を守るために、私たちは日々努力を続けている。

西南戦争当時、日本赤十字社の前身である博愛社が誕生した建物である熊本洋学校教師館ジェーンズ邸は、熊本城内の古城(地区)にあり、現在の熊本県立第一高等学校の体育館付近に建っていた。有栖川宮熾仁親王殿下は1877年(明治10年)4月17日から約3ヵ月間、大本営としてこの建物に宿泊し政府軍を指揮した。その後この建物は、県の官舎や物産館、観聚館、日露戦争後のロシア軍捕虜収容所、第一次大戦中のドイツ軍捕虜収容所等を経て、昭和7年からは、日本赤十字社記念館となり、以後、一階部分は、日赤熊本仮診療所、熊本県赤十字血液センターなどに利用され、昭和45年10月からは、水前寺公園の東隣に移築され、現存する県内最古の洋風建築(熊本県指定重要文化財)として一般公開され、ジェーンズ邸、日赤記念館として親しまれている。昭和7年、日赤熊本県支部敷地内に「日本赤十字社記念館」として移築された旧熊本洋学校教師館ジェーンズ邸は、昭和10年代には次のように説明されていた。

『記念館説明(本建物)此ノ建物ハ熊本藩知事細川護久公ガ熊本城ノ一部「古城」ニ洋学校(明治四年九月開校 教科ノ大部分ハ英語ニヨル)ヲ設立シ教師トシテ米國ヨリ「エル、エル、ジェーンズ」ナルモノヲ招待シ其ノ住宅トシテ建築セシモノナリ其ノ後明治十年西南戦役ノ際 有栖川熾仁親王殿下ニハ征討総督トシテ此ノ建物ヲ御使用アラセラレタルガ同年五月一日佐野伯爵ハ日本赤十字社ノ前身タル博愛社創立ノ御直栽ヲ殿下ヨリ此ノ建物内ニ於テ(察スルニ此ノ室ナラン)受ケラレタルモノナリ爾来熊本縣ノ大小書記官(今ノ総務部長格)ノ官舎トナリ熊本縣庁ガ現在ノ南千反畑町ニ移轉ト共ニ縣庁の北側ニ移サレ物産館、観聚館、商品陳列所或ハ各種團体ノ事務所等ニ使用セラレアリシヲ昭和七年本社ヨリノ命ニヨリ調査ノ結果右博愛社創設御直栽ノ建物ナルコト判明シ本縣ヨリ譲リ受ケ支部構内ニ移シ記念館トシテ保存スルコトトナリシモノナリ此ノコト 高松宮殿下ノ台聞ニ達シ故 有栖川宮殿下ノ御冩真並ニ「熾仁親王行實」「日本人ノ博愛」ナル書籍ヲ御下賜遊バサレ、又昭和八年四月十一日同妃殿下ニハ特に此ノ記念館ニ御台臨アラセラレ更ニ昭和十年十一月四日 高松宮殿下御台臨アラセラル』

また、1977年(昭和52年)に創立100周年を迎えるに当たり、日本赤十字社本社は、先人の注いだ情熱と遺業をしのび、赤十字活動の発展を祈念して、記念式典を盛大に開催し、記念行事の一つとして記念碑を建立した。記念碑は博愛社誕生の舞台となった熊本洋学校教師館「ジェーンズ邸(=日赤記念館)」の敷地の一角に、建立費1,600万円を投じ建立された。モニュメント「愛の手とこしえに」は、黒御影石の台座の上に建立された一辺2メートルの正方形のブロンズの記念碑で、赤十字の人道、博愛の理念を「愛の手」として表現している。また、記念碑の横の長方形の石には日本赤十字社社長東龍太郎氏の直筆により「愛の手とこしえに」の題字が刻まれた。そして、昭和53年6月21日には、日本赤十字社名誉副総裁常陸宮妃殿下をお迎えして、日赤創立記念百周年記念碑であるモニュメント「愛の手とこしえに」の除幕式が日赤記念館(=ジェーンズ邸)で行われた。除幕式には同妃殿下のほか、東龍太郎日赤名誉社長、藤本伸哉日赤熊本県支部副支部長ら50人が出席した。同日、会場を移し、熊本市長嶺町の日赤熊本キャンパスでは、同妃殿下をお迎えし、熊本赤十字病院別館並びに健康管理センターの落成式が執り行われた。

一方、田原坂では、日本赤十字社名誉副総裁秋篠宮妃殿下が、1999年(平成11年)3月9日に田原坂資料館をご視察になり、西南役戦没者慰霊之碑には御献花をなされ、郷土史家の勇知之氏から西南戦争と田原坂の戦い、更には、日本赤十字社の前身である博愛社創設や皇室とのかかわりについて説明をお聞きになった。このご視察は、熊本県内の同一敷地内にある赤十字施設(日赤熊本県支部、病院、血液センター、健康管理センター)の全面改築工事の完成に伴う「日本赤十字社熊本県支部キャンパスグランドオープン式典」が、同妃殿下のご臨席を賜り開催されたときのことだった。天皇皇后両陛下から、「日赤発祥のことを田原坂でお勉強されては…」とのお言葉があり、このご視察が計画されたものだった。皇室と日赤発祥の地の架け橋となったのは、日本赤十字社名誉副総裁宮妃殿下のお成りを請願した、当時の日本赤十字社社長の藤森昭一氏(日本赤十字社名誉社長)と、熊本赤十字病院長の松金秀暢氏(同病院名誉院長、日本赤十字社理事)であった。また、秋篠宮妃殿下の式典へのご臨席は、松金秀暢熊本赤十字病院長がそれまでに、6人もの看護師を皇室に派遣していた実績により実現したものであった。

(支部 梶山哲男)

閉じる
  • ご寄付のご案内

    熊本県支部では、毎年継続した資金協力によって赤十字活動を支えていただくパートナー「赤十字会員」を募集しています。
    ここでは、ご送金方法、地域の赤十字窓口、また赤十字へのご寄付に関する表彰制度や、税制上の優遇措置などについてご案内します。

    さらに詳しくはこちら
  • 遺言・相続財産によるご寄付

    近年、遺言によるご寄付(遺贈)や、相続財産のご寄付のご相談が増えています。
    安心できる方法で、信用できる団体に寄付したいという思いは、皆さま共通しています。
    ご自分や故人の「救いたい」思いを赤十字へ―。
    遠慮なくお問い合わせください。

    さらに詳しくはこちら
  • お香典返しのご寄付

    お香典返しに代えて、赤十字を通じ、故人の遺志を社会に役立てられませんか―。
    お香典返しのご寄付のお申し出を承っています。
    ご希望により、ごあいさつ状等も作成いたしますのでご相談ください。

    さらに詳しくはこちら