日赤発祥の地・熊本 〜連載企画〜

連載34 「博愛社」から「日本赤十字社」に改称

「博愛社」から「日本赤十字社」に改称

博愛社は、明治14年(1883年)5月にベルリンで開催された衛生及び救難法の博覧会に際し、政府から派遣された内務省御用掛の柴田承桂に、欧州に於ける赤十字事業とジュネーヴ条約加入手続きの調査を依頼し、当時ベルリンに住んでいた兄のアレキサンダー・シーボルトにも協力を依頼した。そして、日本が加入手続きを開始すると、井上馨外務卿はアレキサンダー・シーボルトの協力を求め、モワニエへの働きかけに尽力した。このシーボルト兄弟は、博愛社の社員であり、博愛社規則の草案作りにも協力している。

一方で、西郷隆盛とは親戚関係にあり、明治3年から明治6年にかけてジュネーブに留学し、西南戦争時には政府軍の指揮官、その後陸軍卿となっていた大山巌は、3度フランスに渡り、各国兵制を研究する傍ら、同行した橋本綱常陸軍軍医監と共に、ジュネーヴ条約への加入手続きを調査した。この橋本綱常は、明治16年(1883年)、陸軍卿大山巌の随行員として、欧州で万国赤十字条約加盟のために奔走した第一人者だ。彼は、熊本藩の横井小楠らと交流があり、不平等条約に抗議し、安政の大獄で没した福井藩士橋本佐内の実弟でもある。明治17年(1884年)9月にジュネーヴで開催された第3回赤十字国際会議には、日本のオブザーバー参加が認められ、会議への招待状は、大山巌と博愛社社員のアレキサンダー・シーボルトに宛てられていたが、大山の代理として橋本綱常が出席した。

その後、陸軍大臣となった大山巌と、明治18年(1885年)に軍医総監、陸軍省医務局長に就任した橋本綱常は、明治19年(1886年)6月、日本のジュネーヴ条約加入を実現させ、博愛社社員だったアレキサンダー・シーボルトの協力を得て、条約の注釈書である『赤十字条約解釈』を作成し、それを全将兵に配布して普及に努めた。ジュネーブ条約という国際条約への加盟は、単に陸軍の衛生部隊だけの問題ではなく、日本の軍隊、引いては日本が欧州列強から対等に扱われることを意味する。日本国として恥ずかしい真似はできない。軍備や衛生設備の充実だけでなく、国際的な人道的任務の理解も、軍人だけでなく、国民にも浸透させなければならない。ちなみに、明治20年(1887年)4月23日付の陸軍訓令として出された、『赤十字条約解釈』の冒頭に掲げられた大山陸軍相の訓示は、『赤十字条約ノ儀ハ軍人軍属ニ在テ最緊要ノモノニ付、解釈ヲ容易ナラシムル為メ注釈ヲ加ヘ別冊頒布候条、遍ク熟読格守ス可シ』であった。

 

 

博愛社は、1886年(明治19年)に日本政府がジュネーブ条約に加入したことに伴って、翌明治20年(1887年)5月20日に名称を日本赤十字社と改称し、初代社長には佐野常民が就任し、国際赤十字の一員として人道的、道徳的活動を展開することとなった。また、橋本綱常は、赤十字病院の開設に力を注ぎ、明治20年(1887年)、日本赤十字病院の初代院長に就任した。そして、病院長として生涯にわたって、救護員の養成や赤十字活動に尽力した。

 

幻灯機の説明文には、「小松宮彰仁親王殿下、遠く九州に赴きて官賊の別なく傷者を救援せんことを願い、有栖川総督殿下の許可を得て、遂に業を創めたり。これを博愛社と名く。此時此社の殊に功績を著せしは、賊の傷者又は捕虜の病者を救療せしこと是なり…、民家を借り賊兵の傷者を勅療する所を示す、当時、赤の丸一を博愛社の徴章とせり…(この熊本の地を中心とする博愛社の救護活動等が)…各国の信認を得、遂に同盟に加わることを得たり。」とある。つまり、熊本における救護活動が国際的に認められ、ジュネーブ条約に批准し、世界赤十字の一員となることができたのだ。

(支部 梶山哲男)

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