日赤発祥の地・熊本 〜連載企画〜

連載17 博愛社設立請願書に対する西郷従道の回答

この連載では、「敵味方の区別なく救護する」という考え方が、「当時日本では受け入れられなかった」という定説を否定しようと試みている。両軍の負傷兵を博愛社設立以前から官軍病院で治療していた話は他にもある。

佐野常民は明治10年4月6日付けで右大臣岩倉具視あてに博愛社設立の請願書を提出したが、これについて岩倉は、佐野常民が熊本に向けて神戸を出発した同年4月12日付けで、陸軍卿山形有朋代理陸軍中将西郷従道あて照会し、4月19日付けでその回答を得、これを受けて4月23日付けで博愛社設立を却下している。この西郷従道の回答の中に、敵兵を治療していることが述べられている。
西郷従道の回答の内容を要約すると、「議官佐野常民・大給恒博愛社設立願の件ご質問につき意見を申し上げます。議官佐野常民・大給恒戦地創者救済の為の博愛社設立の願い出の件、願書と社則を熟視したところ、その設立においては、最も善美なことと存じますが、今般御征討のことで国内で多数の死傷ありと言っても、軍事病院医官及び看病人卒など適当に備え、治療にはひとつも差しさわりありません。

しかし今新たに結社し救済の員、戦地に派遣すれば、恐らくは実際大変混雑いたします。欧米各国においても他国と戦争する場合には、結社救済の例は少なくないと言っても、国内の反賊鎮圧においては、例があるかないか確認が難しいが、前に述べたように、この度結社し戦地へ派遣する件は、軍医職務上においても予め心得ていないと、実際は実施困難です。ご察しください。

また、開戦中は敵の俘虜・傷者等は、陣中病院の治術を行っております。戦後救済については人民救護にして地方に関係の事件の者、あえて軍衛とは無関係ですので、この件は別の方法で検討されてはと存じます。先般ロシア軍医戦地立越の時も、すでに断りましたが、この件もお断りしたいと存じます。このような結社は、ことあるごとに我に判断を求められては、善良な方といっても、実際の整備は難しく、このような件は平常において深くご検討されることのように思います。よってこの件意見申し上げます。」である。(ただし、著者は漢文が読めず一部想像で訳しているのでご了承願いたい。)

西郷従道

この内容が熊本にいたと思われる佐野常民に伝わったかどうかは分からないが、従道は、「大変良いことであるが、負傷者は多いがちゃんと軍事病院には医官と看護人を配置し、開戦中は敵兵も治療している。」と、敵も味方も救護していることを証言している。また「戦後救済においては地方の問題で軍とは関係ない。」と言い、戦闘状態でなくなったら現地で相談するよう言っているようにも判断できる。さらに、赤十字のことを知っており、「このような結社は平時において検討すべき。」と、デュナンの提言をそのまま提言しているようにも聞こえる。西郷従道も世界赤十字を知っていたのだ。ウイリアムウイリスや岩倉使節団から具体的な話を聞いていたのだろうか。

(支部参事 梶山哲男)

 

 
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