日赤発祥の地・熊本 〜連載企画〜

連載6 常民がヨーロッパで出会ったもの~赤十字思想~

赤十字思想誕生150周年記念切手

アンリ・デュナンは「傷ついた兵士はもはや兵士ではない、人間である。人間同士としてその尊い生命は救われなければならない。」との信念のもとに救護活動にあたりヨーロッパ全土から共感を得た。それに比べ佐野常民は、博愛社の規則第4条に「敵人ノ傷者ト雖モ救ヒ得ヘキ者ハ之ヲ収ムへシ」と規定し、西南戦争当時「敵味方の区別なく救護する」という考え方が最初日本では理解されなかったと云えられているが、本当のところは理解されたがなかなか許可されなかったと言うのが正しい言い方ではないだろうか。

ヨーロッパにおいては、もともと医師や看護婦は中立であり、治療や看護をするうえで敵も見方もない。また、ギリシア神への宣誓文ヒポクラテスの誓いがあり、このなかで、これは改訂版であるが「私は、年齢、疾患や障害、信条、民族的起源、性別、国籍、所属政治団体、人種、性的指向、社会的地位、その他いかなる他の要因の斟酌であっても、私の職務と私の患者との間に干渉することを許さない。私は、人命を最大限尊重し続ける。」などが謳われている。中国においても、紀元前の思想家で儒家である孔子や孟子によって、人間愛である「仁」が説かれており、仁が様々な場面において貫徹されることにより、道徳が保たれると説いている。日本においては、貝原益軒の「養生訓」で「医は仁術なり。仁愛の心を本とし、人を救うを以て志とすべし。わが身の利養を専ら志すべからず。天地のうみそだて給える人をすくいたすけ、萬民の生死をつかさどる術なれば、医を民の司命という、きわめて大事の職分なり」「醫は仁術なり。人を救ふを以て志とすべし。」と説いている。

特に日本人は戦争などで根こそぎ破壊する民族ではなく、神々が宿る自然を愛し、殺生を嫌う仏教も信仰してきた農耕民族である。映画のラスト侍で描かれたように、戦争で死ぬことを名誉と思って戦ってきた武士道の精神や情けも大切にしてきた。敵兵も味方にしたり、丁重にもてなしたり、戦闘中以外は刀を抜かない者は殺さなかったはずである。敵将を裁き勢力を確保した後は意外と寛大だった。一人の武士として人間として接してきたはずだ。佐野常民はパリやウィーンで赤十字と出逢い何を感じただろうか。文明開化だけでなく、「戦場の負傷者と病人は敵味方の差別なく救護すること、そのための救護団体を平時から各国に組織すること、この目的のために国際的な条約を締結しておくこと」と胸に刻んだはずだ。そして人間誰しもがもっている博愛精神により、戦傷者の取扱についての国際的な取り決めがなされていることに、さぞ驚いたことであろう。また、日本はまだその段階にないことも感じたはずだ。(支部 梶山哲男)

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